汗があまり目立たない方にはわかりにくいかもしれませんが、汗の多い体質、多汗症というのは本人にとっては意外と深刻な悩みになります。
多汗症(たかんしょう)とは、緊張や不安などのストレスによって、汗を大量にかいてしまうというもの。つまり、交感神経に支障が起こり、体温が上がらなくてもエクリン腺から汗が多量放出される病症です。全身から発汗するケースもありますが、多くは頭部、手、ワキなどの局所から発汗します。
一般的な治療法には、次の3つがあります。
・塩化アルミニウムを局所に外用する。
・手や足などの場合、発汗に関わる交感神経をブロックする。
・ワキの場合、形成外科手術で皮膚を切除する。
このほか、最近注目され始めているのが、美容整形外科で行われているボトックス注入法です。
ボトックスには、アセチルコリンという神経伝達物質の放出を止める作用があるのです。そこで、ボトックスをワキの下に注入すれば、アポクリン腺やエクリン腺からの発汗を抑えられるというわけです。
ただし、永久に効果があるというわけではありません。ボトックス注入後、3ヵ月ほどで新しい運動神経の側副枝が伸びるため、再びアセチルコリンが放出され始めてしまいます。とは言え、年に2〜3回注入するだけで発汗を抑えることができ、しかも数年続けていけばやがて汗腺が萎縮し、汗の分泌量が低下するのだとか。
注入にかかる時間は約10分。麻酔の必要もなく、体への負担の少ない手術と言えるでしょう。
多汗症は単なる汗っかきとは違い、とくに手のひらなどは、汗がしたたるほど発汗するため、すべって物が取りにくかったり、本のページが破れてしまったりと、日常生活にも支障をきたしてしまいます。審美的な面だけなく、スムーズな日常生活を送るためにも、まずは簡単なボトックス注入を試してみるのがいいかもしれません。